2012/08/22

◎『ビーオーエヌ』ピアノ解説/澤近泰輔

はじめに


今回Sasaticaの「ビーオーエヌ」の楽譜をお求め頂いた皆様。
ありがとうございます。
ピアノが弾ける方、他の楽器を演奏される方、無縁とおっしゃる方。
様々だと思いますが、せっかくなのでほんのちょっとした解説をさせて頂こうと思い立ちました。
それが何かのきっかけになり「記念の楽譜」が「演奏用譜面」になる、というのもまたいいなと思うのです。
そうならなかったにしても、普段僕たちがどんなことを考えて弾いているのかを感じてもらえるなら
実際の演奏をお聴きになった時に新たな興味や発見も生まれるかもしれません。
もちろん解説不要な方もいらっしゃるでしょうし、初見で楽勝って方もおられるでしょうから
そんな方は参考として気楽に見て頂ければと思います。
異論を持たれるのもアリじゃないでしょうか。
では。



ポイント1


Introなどの二分音符はそれだけで美しくハーモニーになるようにしてあります。
まずそれだけを弾いてみて下さい。それを伴奏としてメロディを支える感じです。
なので二分音符は均等な音色で、メロディは少し引き立つように。


ポイント2


Intro二小節目の三拍目から、右手のメロディ(ファ# ファ# ファ#ソファ#ミ)が
三小節目のレの音にスラーで繋がると同時にその下のラから新たにメロディが生まれます。
そのバトンタッチを意識して弾いてみましょう。そういった箇所は後にも出てきます。


ポイント3


A三小節目の下段、ラから四分音符で始まるメロディは右手人差し指を中心に使って弾くといいと思います。
A四小節目三拍目の左手ソの音はすぐ後に右手メロディが同じ音を弾くのですばやく離さなければなりません。
A四小節目最後の音(下段 ミ)は左手に担当させると次に進むのが楽かもしれません。


ポイント4


B四小節目は、歌を受けて次の展開へ向けてリードしていくところです。
そこまでの三小節よりは主張が必要と言いますか…。
そしてその小節の中でも主役は右手の和音の下(レ)から始まる流れです。


ポイント5


B五小節目からの和音の移り変わりと(特に)右手の動きを味わってみて下さい。
二分音符が少しずつ下がっていくごとに切なさ度合いが変わります。
必ずではありませんが、この右手の動きのように移動の少ない流れは基本ではあります。
人差し指が隣を弾くだけで違った感情を呼びおこすのは不思議な事です。


ポイント6


B七小節目からはサビに向けての助走が始まります。
サビでメロディが最大に盛り上がれるように四小節かけてじっくり盛り上げて下さい。
作詞の良君はこのメロディに対して、一、二番とも故人の遺したアイテムを乗せました。
よく分析するとその気持ちの流れのような事も見えて来ないでしょうか?
そしてメロディは最高潮に達します。


ポイント7


ここまでくればあとはフォルテで引っ張るのですが、単に強く弾くというのでもありません。
僕の場合はBのさいごからのクレッシェンドをCアタマの四分音符で解放して
その音圧の中からオクターブ下の二拍目以降の和音が浮かび上がる感じで弾いています。
この歌の一番高い音はC、C’二小節目のファ#です。
歌の音圧も自然と上がるので共にフォルテを造る感じです。


ポイント8


譜面は一番のみですが、先日の演奏では一番終わりでIntroに戻りました。
二番の後はBのメロディをもじって弾いたりしたかと思います。
いずれポップスなので以降はかなり崩して弾いています。
オクターブ上げたり下げたりフィルイン(合いの手?)を入れたり。
ポップスは変化、進化していきます。
今度演奏する時はまた違う形になるかもしれません、というか、なります。
でもこの楽譜は一つの正解ではあります。
余裕ができたら皆さんもこの楽譜を基に、自由に弾くという事を試したりしてみてはいかがでしょうか。
また、女性の方は長三度上(嬰ヘ長調 or 変ホ長調)か完全四度上(ト長調)に移調して
弾き語りに挑戦、というのもいいと思います。



おまけ


最後の最後の和音の「積み方」は僕のアレンジでは終止形として最も良く使われる形だと思います。
下から一度、五度、三度、一度となっていて安定がよく響きます。
同じコードネームでも「どう積み上げるか」で全く違うものになります。
そんな事にかなり気を配って書いています。


以上、長々書きましたが何かの参考になれば幸いです。
僕は高校以上の数学は全然わかりませんが、数学の解説書などを読むと凄いロマンを感じます。
楽譜が読めなくてもこの解説とともに目で追うとなにかワクワクする、なんて思って頂けたら最高です。
こんな企画もまた続けられたらと思います。

澤近 泰輔

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